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電子カルテ標準仕様の機能要件|提示対象機能一覧の読み方を徹底解説【第2編】

本シリーズ第2編では、中小病院向け電子カルテ標準仕様書の中核である「提示対象機能一覧(別紙様式)」を取り上げます。これは電子カルテが備えるべき機能を体系的に並べた一覧で、ベンダー選定の実務に直結します。

第1編で全体像を確認したとおり、標準仕様は機能要件と非機能要件の二本柱で成り立っています。本編はそのうち機能要件を、実際の読み方と選定への活かし方まで踏み込んで解説します。

提示対象機能一覧とは

提示対象機能一覧は、電子カルテが備えるべき機能を分類ごとに並べ、各機能の実装状況を製品側が示すための一覧表です。病院はこの表を使って、複数製品を客観的な同じ基準で比較できます。

従来、機能比較は各社の営業資料やデモに依存しがちで、粒度も表現もバラバラでした。共通の一覧様式があることで、比較の土俵がそろい、要件の抜け漏れを見つけやすくなります。

この一覧は「あれば便利な機能」を無限に並べたものではなく、中小病院の標準的な業務に照らして必要とされる機能を体系的に選び出したものです。だからこそ、自院の業務と一つずつ突き合わせる価値があります。

表の列構成の読み方

提示対象機能一覧は、「項番・分類・機能名・機能要件・実装有無・備考」といった列で構成された表です。読むときは、機能名だけでなく「機能要件」の記述内容と「備考」を必ずセットで確認します。

特に「機能要件」列は、その機能に何を求めているかの定義です。ここを読み飛ばすと、同じ機能名でも中身の違いを見逃します。「備考」列には代替手段や制約条件が書かれることが多く、実運用の可否を左右します。

  • 項番・分類:機能がどの業務領域に属するかを示す
  • 機能名・機能要件:何を、どの水準で求めるかの定義
  • 実装有無:●○△×で製品側が回答する欄
  • 備考:代替手段・制約・補足を記載する欄

実装有無の4区分(●○△×)

実装有無は次の4区分で示されます。この区分を正確に理解することが、機能一覧を読み解く第一歩です。とりわけ●と○、△の違いを取り違えると、比較の結論が大きくぶれます。

4区分は「できる/できない」の二択ではなく、代替や一部実装というグラデーションを含みます。この中間の区分をどう評価するかが、実は選定の巧拙を分けるポイントになります。

  • ● 実装あり:記載内容が不足なく実装されている
  • ○ 代替可:専用機能はないが、他機能の使用で代替できる
  • △ 一部実装:記載内容の一部が実装されている
  • × 実装なし:実装されておらず、他機能でも代替できない

●○△×をどう解釈するか(実務のコツ)

●が並ぶ製品ほど良い、と単純には言い切れません。自院が実際に使う機能で●がそろっているかが重要で、使わない領域の●は評価に影響しません。まず自院の必須機能を絞り込むことが先決です。

○(代替)や△(一部)は特に注意が必要です。代替手段が実運用で許容できる手間かどうか、△がどの部分を欠くのかを、備考欄や実機デモで具体的に確認しましょう。「一応できる」と「実務で回る」は別物です。

  • 自院の必須機能リストを先に作り、その項目に絞って●○△×を比較する
  • ○・△の項目は、備考の代替手段・制約を読み、実機で操作手順を確認する
  • ×の項目が業務上クリティカルなら、開発予定・時期をベンダーに確認する

カバー範囲:約270項目・30超の分類

機能一覧は約270項目・30以上の分類に及び、病院運営の幅広い業務をカバーします。外来から入院、在宅、健診、そして文書・マスタ管理まで、診療の流れに沿って網羅的に整理されています。

以降では、この広い範囲を業務のまとまりごとに見ていきます。自院の診療科構成に照らして、どの塊が重い要件になるかをイメージしながら読むと、必要機能の輪郭がつかめます。

なお、約270という項目数は多く見えますが、自院で実施していない領域は評価対象から外せます。まず「使う塊」と「使わない塊」を仕分けるだけで、検討すべき項目は現実的な数に絞り込めます。

外来系:予約・受付・診察・記録

外来系は、患者が最初に触れる領域であり、業務量も多い部分です。予約・受付から、医師の診察、記録、病名管理、紹介状などの文書までが含まれます。

  • 外来予約・受付・患者呼び出しなどの受付業務
  • 診察記録・経過記録・テンプレート入力などの記録業務
  • 病名登録・転帰管理・紹介状(診療情報提供書)作成

検査系:検体・生理・画像・内視鏡

検査系は、検体検査・細菌検査・病理検査・生理検査・放射線・内視鏡など、多くの部門にまたがるオーダーと結果参照を扱います。既存の検査・画像システムとの連携が論点になりやすい領域です。

  • 検体検査・細菌検査・病理検査のオーダーと結果参照
  • 生理検査・放射線検査・内視鏡検査のオーダーと画像・レポート参照
  • 検査結果の時系列表示・基準値判定などの参照支援

治療系:処方・処置・注射から手術まで

治療系は、日々の診療で最も頻度が高く、かつ安全性が問われる領域です。処方・処置・注射に加え、透析・リハビリ・指導・化学療法・手術まで、専門性の高いオーダーが並びます。

特に化学療法のレジメン管理や手術のオーダーは、自院で実施している場合に要件が重くなります。自院の実施状況に応じて、●が必須の項目と不要な項目を切り分けることが大切です。

治療系は医療安全に直結するため、投与量チェックや相互作用の警告、実施記録の確実性といった観点も重要です。機能一覧の●だけでなく、こうした安全機能の作り込みを実機で確かめておきましょう。

  • 処方(内服・外用・注射)・処置・注射のオーダーと実施記録
  • 透析・リハビリテーション・各種指導のオーダーと記録
  • 化学療法(レジメン管理)・手術(術前術後)に関する機能

入院・病床管理系

入院系は、病床管理・患者状態管理・食事(給食)・医事会計との連動など、多職種が関わる領域です。看護記録や患者状態の可視化は、病棟運営の効率を大きく左右します。

  • 入退院・転棟・病床管理と空床状況の把握
  • 患者状態管理・看護記録・観察記録
  • 食事(給食)オーダーと医事会計との連動

在宅系:訪問診療・訪問看護・訪問リハ

在宅系は、訪問診療・訪問看護・訪問リハビリなど、院外で行う業務を対象とします。中小病院が地域医療で担う役割が大きい領域であり、モバイル環境での記録や計画管理が論点になります。

自院が在宅医療に力を入れている場合、この分類の●の充実度は選定を左右します。訪問先での入力のしやすさや、計画書・報告書の作成支援まで確認しておきましょう。

在宅では通信環境が不安定な場面もあるため、オフライン時の入力や後からの同期に対応できるかも実務上の論点です。地域包括ケアを担う中小病院ほど、この領域の作り込みが効いてきます。

  • 訪問診療の計画・記録・スケジュール管理
  • 訪問看護の指示・記録・報告書作成
  • 訪問リハビリの計画・実施記録

健診・文書・マスタ管理

健診(健康診断)業務、各種文書の作成・管理、そしてシステムの土台となるマスタ管理も機能一覧に含まれます。マスタ管理は地味ですが、運用の持続性を支える重要な領域です。

  • 健診の予約・実施・結果管理・結果通知
  • 各種診断書・証明書・同意書などの文書作成と管理
  • 医薬品・病名・診療行為などのマスタ管理と更新

データ移行・部門システム連携・API

標準仕様には、機能一覧のほかに、共通データ移行レイアウトや部門システムとの連携共通仕様、部門システム間API、業務効率化サービスAPIなども別紙として整理されています。

これらは、乗り換え時のデータ移行や、既存の検査・画像システムとの連携を検討するうえで重要です。特に共通データ移行レイアウトは、ベンダーロックインを避け、将来の乗り換えを現実的にする鍵になります。

選定時には、機能そのものだけでなく「自院の既存部門システムと、どのAPIでどこまでつながるか」を必ず確認しておきましょう。連携の可否は、導入後の業務負荷を大きく左右します。

業務効率化サービスAPIは、外部のサービスと安全に連携し、入力補助や事務作業の自動化などにつなげるための入口です。標準化されたAPIがあることで、電子カルテを土台に新しいサービスを組み合わせやすくなります。

実機デモで確認すべきこと

機能一覧の●が並んでいても、操作性や入力の手間までは表からは読み取れません。実機デモは、表の数字を実運用の感覚に翻訳する場です。現場スタッフを交えて、日常業務のシナリオで触ってみることをおすすめします。

とくに、外来の混雑時を想定した一連の流れ(受付から会計まで)を通しで操作すると、画面遷移の多さやクリック数といった「表に出ない負担」が見えてきます。ここでの気づきが、導入後の満足度を左右します。

  • 自院の代表的な診療シナリオを事前に用意し、それに沿って操作してもらう
  • ○・△の機能は、実際の代替手順や欠けている部分をその場で確認する
  • 医師・看護師・医事など、立場ごとに使い勝手を評価してもらう

選定への活かし方(チェックリスト)

機能一覧を実際の選定に落とし込む手順を整理します。ポイントは、製品起点ではなく自院の業務起点で読むことです。

  • 自院に必要な機能を機能一覧の分類に沿って洗い出す
  • 候補製品の実装有無(●○△×)を必須機能に絞って横並びで比較する
  • ○・△の項目は備考欄と実機デモで実運用の可否を確認する
  • ×のうちクリティカルな項目は、代替運用案または開発時期を確認する
  • データ移行レイアウトと部門連携APIで、乗り換え・連携の現実性を確認する

AIネイティブな電子カルテという選択肢

標準仕様は「備えるべき機能」の共通基準ですが、これからの電子カルテは、その機能を「どれだけ楽にこなせるか」でも差がつきます。記録の入力補助や情報の要約など、AIを前提に設計された製品は、同じ機能でも現場の負担が大きく変わります。

重要なのは、AIが標準仕様の代わりになるわけではない、という点です。まず標準に沿って必要機能と品質を満たしたうえで、その体験を高める手段としてAI活用を評価するのが、順序として健全です。

Sakigake は、標準仕様の思想に沿いながら、AIネイティブな体験で中小病院の日々の業務を軽くすることを目指しています。機能一覧の充足と使いやすさの両立を、選定の視点に加えてみてください。

想定Q&A

  • Q. 全項目●が理想? A. いいえ。自院が使う機能の●が重要で、不要領域の●は評価に無関係です。
  • Q. 実装有無は誰が記入? A. 製品側(ベンダー)が回答します。備考と実機で裏取りするのが実務です。
  • Q. 約270項目すべてを検討する必要が? A. まず自院の必須機能に絞り込み、そこを重点的に精査するのが効率的です。

まとめ

提示対象機能一覧は、中小病院が電子カルテを客観的に比較するための共通の基準です。実装有無の区分を理解し、自院の業務に沿って必須機能を絞り込んで確認することで、選定の精度が高まります。

Sakigake は、こうした標準仕様の思想に沿った中小病院向けのAIネイティブ電子カルテを目指しています。次の第3編では非機能要件を扱います。最新の要件は、必ず厚生労働省・デジタル庁の一次情報でご確認ください。